ルーヴェン・フォイヤーシュタイン教授の教育論を構成する4本の柱

1. 認知構造変容理論( Structural Cognitive Modifiability)


難しい言葉ですが、人間の認知構造は変わることができるという信念をさしています。

「認知」:「認知」とは、知覚、記憶、学習、思考などの基本的な機能を表しています。ですから、人間の営みはすべて「認知」と関係があります。

「構造」:例えば建物の構造などは一度出来上がってしまえば動きません。しかし心理学的な「構造」は、その構成要素が相互にダイナミックに働きかけ影響しあうシステムであると考えられます。

例えば「記憶」は代表的な認知構造ですが、「記憶」には、知覚的要素(たとえばはっきりと見ることなど)、知的要素(内容の理解)、動機的要素(覚えなければならないことへの興味など)などが含まれており、しかもこれらの要素はお互いに影響を与えあっています。

例えば、これらの要素のひとつに変化が起こると(例えば興味がますと)、それが他の要素に影響を与え、やがてはっきりとものを見るようになり、理解が深まってきたりします。

次に、心理学的構造には、変化してゆく性質があります。

構造が変化するということは、構造の構成要素をなす機能が変わってゆくということです。

例えばどんな仕事でもいいのですが、最初はかなりの時間が必要だった作業が、指導を受けることによって、時間が短縮されることがあります。このように仕事のリズムの変化を取る場合もあれば、高い集中力や柔軟性を示すようになることもあります。

構造がもつ第3の特徴は「適応力」が発達していくために非常に大切なものです。構造を構成する要素のエネルギーが強くなってくると、やがて構造そのものが自律的に働き始め、その働きが永続的な力を持つようになります。

例えば、「緻密さ」は認知構造のひとつですが、緻密さを獲得した人は、その人が行う活動のすべてに緻密さを発揮します。

機能水準の低い人(例えば低いIQを示し絶望視されていたような人)の場合でも、例えば、最初は存在しないのも同然だった「緻密さ」といった認知構造が、正しい指導を得て、構成要素である機能の訓練を繰り返し行うことによって強くなり、自律的になってきます。

認知構造の変容は自然発生的なものではありません。特に機能水準の低い人の場合、認知構造は必ず変容するという強い信念に基づいた指導者の介入が必要です。

フォイヤーシュタイン教授はその介入を媒介(mediation)と呼びました。

認知構造を変化させるもの、それが二本目の柱である媒介学習体験(mediated learning experience)です。

IE(認知能力強化教材)とは、とりもなおさず、認知機能を強化、活性化し、認知構造に変革をもたらすための道具(instrument)なのです。